糖尿病患者の運動の必要性
糖尿或いは糖尿病予備軍の方にはなぜ運動が必要になるのでしょうか?
運動をするためには、エネルギーが必要です。つまり筋肉を働かせるための燃料として、血液中のブドウ糖(血糖)が必要となるのです。したがって、運動すると、血液中の余ったブドウ糖が筋肉の細胞内に取り込まれて、この結果血糖値の下降をきたすのです。糖尿病の運動療法の基本的なことはここにあります。
インスリンは、筋肉や脂肪組織に血糖を取り込ませる働きをしますが、運動によって筋肉や脂肪組織がインスリンに反応しやすくなり、インスリンの働きが活発化します。
これによってインスリンを節約できるためすい臓の負担が軽くなり、結果的に血糖値が低くなって血糖のコントロールに役立つというわけです。
また運動によって、人間の生命を維持するうえで最低限必要なエネルギー量、すなわち基礎代謝が向上します。
一日に消費されるエネルギーの約6割〜7割を占めているこの基礎代謝の向上により、身体の心肺機能も高まり血流も良くなっていわゆる血液サラサラ状態になります。
このように、運動することによって筋肉のブドウ糖の利用効率を向上させるだけでなく、血液サラサラでストレスの解消、ひいては生活習慣病全般の予防にも役立ちます。
また、最近話題になっているのが、この運動と併用することでさらなる効果が期待できるサプリメントの摂取です。
どんな運動がいい?
糖尿或いは糖尿病予備軍の方の運動の種類としては、動的で全身を使う有酸素運動(早足歩き、ジョギング、水泳、サイクリングなど)が良いとされています。
糖尿病の運動療法の主な目的は、低下しているインスリンの働き・効果を良くすることにありますが、運動によりインスリンの働きが良くなる部位は、運動した部分の筋肉に限られます。
従いまして、できるだけ多くの部位を動かすような全身運動がお奨めなのです。しかも、ブドウ糖を燃料としてのエネルギーに変え、同時に脂肪まで燃やそうとすると十分な酸素が必要になりますので酸素をあまり吸い込まない短距離走といった瞬発的な動きの運動ではなく、ゆっくりと酸素を吸い込みながら全身を使うジョギングや歩行、水泳などが良いでしょう。
運動量はどのくらい?
糖尿或いは糖尿病予備軍の方の運動量は、1日平均150キロカロリー(1週間当り1,050キロカロリー)を目標にするのが適切とされます。
150キロカロリーの運動量の目安としては、
- 早歩き(80m/分):30〜40分
- 軽いジョギング:20分
- 歩くスキー:20分
- 自転車(平地):30〜40分
- テニス:20分
- 縄跳び:10分
- 水泳:10分
になりますが、最近は3分程度の軽めの運動をこまめに続けるのも有効であるとされています。
また、血糖値は食後1時間から1時間半位でピークに達するので、食後1時間くらいに運動を開始すると高くなる血糖値を抑えられます。
運動療法を行う時の注意点としては、血糖コントロールが極端に悪い場合(血糖250mg/dl以上または尿中ケトン体が陽性の時)、高血圧(最高血圧180mmhg以上)、眼底出血がある場合、腎臓機能の低下がある場合など、運動により急性の合併症を起こすことがあるため、こういった場合は運動療法を制限した方がよいでしょう。